大人の発達障害
発達障害とは
発達障害という用語は、法律上の定義と医学的な定義の間で少し違いがあります。
発達障害者支援法(2005年)では「発達障害」とは、自閉スペクトラム症(ASD)[自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害]、学習障害、注意欠如多動症(ADHD)、その他これに類する脳機能障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとされています。医学的には、神経発達障害(DSM-5)では、これらに加えて知的障害が含まれます。発達障害は、基本的には1)生来性の脳機能の偏りであり、単に心理的な要因だけによるものではない。2)発達期に特性が出現する。3)症状、経過が一時的なものではなく継続して認められる。4)障害は年齢とともに軽減することが多いが、成人期にも持続している。5)程度はさまざまであるが遺伝的素因が関係している。6)出生前、出生後の環境因子も関与している。と考えられています。
大人の発達障害
発達障害は幼少期・児童期からその特性が発現するので、子どもの頃から何か症状があったはずなのですが、児童期には周囲も「ちょっと変わった子だな」「個性的な子だな」くらいにしか受け止めず、特に問題にされない場合や、多少徴候があっても気にされず、診断や特別な支援を受けることなく成長することがよくあります。このように児童期に問題にされることなく大人になった発達障害の方が、大学に進学し実習や実験で他の学生と協調することが苦手であったり、就職して仕事がうまくこなせなかったり、対人関係のトラブルが続くことがあります。大学や職場で適応できないことで悩み、人と関わることが怖くなったり、「うつ」など様々な症状を呈する場合があります。
発達障害に併存する疾患および二次障害
発達障害では、うつ病、不安症、強迫症、摂食障害などの様々な精神障害が併存することが知られています。
発達障害の方が大人になる過程で、発達障害の特性のために、職場で何度も注意されたり、笑われたり、行動を非難され続けると自信喪失や自己嫌悪に陥って心のバランスを崩すことがあります。また、家族から「やる気がない、気持ちが弱い」などと言われ、理解が得られないことで人間不信となり自暴自棄になることもあります。学校、家庭、職場において不適応状態となり、精神症状や行動異常が出現することがあります。これを二次障害といいます。二次障害には、うつ状態、強迫症状、幻覚・妄想、解離症状、食行動異常などの精神症状の他に、不登校、ひきこもり、暴力、自傷行為、自殺企図などの問題行動があります。このような症状や行動があらわれたら、すみやかに専門の医療機関に相談してください。